鍼の本数の基準
施術中の何気ない会話の中でよくあるのが鍼の本数についての質問です。
「何本くらい刺してるんですか?」
「沢山刺した方が効くんですか?」
「2,3本じゃダメなんですか?」
鍼灸という特殊な施術を受ける人にしてみれば、このような疑問を抱くのは当然のことなのかもしれません。
一回の施術に使用する鍼の数は施術者によってかなりの差があり、少なければ一本、多ければ数百本にも及びます。
何故こんなにもバラつきがあるのでしょう?
鍼の本数は一体何を基準に決められているのでしょうか?
実は鍼灸には標準的な施術というものがなく、施術者がどのような施術法を採用しているかが鍼の本数に強く影響しています。
「鍼は少ない方が体への負担がかからなくて良い」「少ない方が効果的だ」と考えるか、あるいは「効果的な施術には沢山の鍼が必要」と考えるか、それぞれの施術法の基盤となる施術理論の違いが鍼の本数に反映されるわけです。
多くの鍼灸師は、高い施術効果を得るためには刺激量が適切でなければならないと認識しており、鍼の本数はこの刺激量を左右する重要な要素の一つだと考えています。
刺激量に関わる要素
鍼の本数は刺激量を左右する重要な要素であると述べましたが、刺激量に関わる要素は鍼の本数以外にいくつも存在します。
ここで代表的な3つについて簡単に解説しておきましょう。
- 鍼の本数
- 鍼の太さ
- 鍼の響き(得気)
1.鍼の本数
基本的に鍼の数が増えればそれに伴い刺激量も増えることになります。
鍼を一本しか使わないものから数百本刺すものまで様々な施術法があることは先に述べましたが、少ないから効かない、多いから効くという訳ではありません。
2.鍼の太さ
日本で流通している鍼の直径は0.1mm~0.4mm程度まで(特殊な鍼は除く)いくつかの種類があり、0.16mm~0.2mm程度の鍼がよく使われている印象です。
細い鍼ほど小さい刺激、太い鍼ほど大きい刺激になります。
鍼が太いほど痛みや出血を伴いやすいとされ、こうしたことも考慮して鍼の太さが決定されます。
3.鍼の響き(得気)
鍼を刺すと、注射を刺したときのようなチクッとする痛みとは明らかに違う感覚(「ズーンと響く」「重怠い」「イタ気持ちいい」などと表現されることが多い)を感じることがあります。この独特の感覚が鍼の響き(得気)です。
中国ではこの感覚を治療上必要なものとして重視していますが、日本では中国ほど重視されていません。鍼の響きと効果は関係ないと考える鍼灸師も多く、響かせないソフトな鍼治療が今の日本の鍼灸の主流となっています。
以上、鍼の刺激量に関わる要素について簡単に解説させていただきました。
ここからは当院の施術について、ここまでの内容と関連付けてお伝えしたいと思います。
当院の鍼の特徴
当院で行う鍼の施術はトリガーポイント鍼療法と呼ばれるもので、これは気や経絡、ツボ、陰陽五経といった東洋医学的概念に基づく鍼とは対極に位置する施術です。
トリガーポイント鍼療法では所謂ツボではなく、筋肉や腱、靭帯などの過敏部位であるトリガーポイントに適切な刺激を加えることで除痛や身体機能の回復を図ります。
1.鍼の本数
トリガーポイントというとツボのような点をイメージするかもしれませんが、実際は点ではありません。運動器(筋肉、腱、靭帯など)の過敏化領域であるトリガーポイントは至る所に様々な大きさで分布しています。これに対して鍼一本の効果範囲は限定的であるため、症状に関与するトリガーポイントの分布量・分布範囲に応じた本数が必要となります。
当院では20~40本前後を目安とし、症状や施術範囲、鍼に対する感受性の違いなどに合わせて適宜増減しています。
特に鍼が苦手な人に対しては使用本数を減らす代わりに鍼通電をしたり、徒手療法中心の施術に切り替えるなどして一定の施術効果を担保できるよう工夫しています。
2.鍼の太さ
日本では細い鍼を使用した「優しい刺激」「痛くない鍼」を売りにした施術が多いのですが、細すぎる鍼は当院で行っているトリガーポイント鍼療法には向いていません。
これはトリガーポイントが深部の構造にできやすく、容易に曲がる細い鍼ではヒット率が下がるばかりか意図しない組織を誤刺するリスクが高まり却って危険だからです。
トリガーポイント鍼療法に用いる鍼には「目的とする構造に到達する長さ」と「正確・安全な刺鍼を担保する太さ」が求められ、当院の施術で使う鍼も当然これらの基準を満たすものです。
具体的には長さ約5cm・直径0.2mm~0.24mmを基本サイズとし、必要に応じてより長く太い鍼を使用しています。
3.鍼の響き
トリガーポイント鍼療法において響きは必須の感覚です。響きはトリガーポイントに鍼が当たったことを示す指標であり、響きを感じない鍼はトリガーポイントに当たっていないことを意味します。
トリガーポイントを狙う施術をする以上は、耐えられる範囲に響きを調整することはあっても意図して響かない鍼を打つことはありません。
響きが重要とはいえ、耐え難いほどの響きを無理強いしたりはせず、刺激の許容範囲を慎重に見極めながら施術を進めるようにしています。
まとめると
- 鍼の数は比較的多い部類に属する
- トリガーポイントの刺激に必要な太さ・長さの鍼を使用
- ズーンとした響き感のある鍼
以上の3つが当院の鍼の特徴ということになります。
トリガーポイント鍼療法は鍼の響き感を好む人にとっては非常に高い満足度を得られる施術です。
響く鍼をそれなりに多く打つため、人によっては刺激が強いと感じるかもしれませんが、その刺激量に見合ったリターンが期待できます。
無理なく受け入れられる範囲に刺激量を調整することもできますので、鍼が苦手な人も怖がらずに是非チャレンジしてみてください。
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